「サヨナラ」で騙されて







「サヨナラ」って一回言ってしまえば、案外容易いものだったよ。
崩れていく心の音が聞こえてくる様で、そりゃァ快感だった。
追い縋った手を振り払うまでもなかったかい。
それとももっと酷い事をした方が良かったかな。
でもね、遊び心ってワケじゃないんだ、
これだけは信じてほしい。


何故って聞かれれば…それはそれで困るんだけど
確かに意思は在ったんだよ。
「サヨナラ」って言おうって。


でもそれには別れる為の意思なんて存在しなかったんだ。
だから…、ほら、泣かないで。
どういう事かって聞かれても、自分でもよく分からないんだ。
何でだろうね。
だけどね、君のその瞳を見てはっとしたよ。


その縋り付くような瞳が見たかったんだ、とね。
それからどうしたら君の心を抉り取る事が出来るかを寝ずに考えたよ。
指を切り落としてやろうとか、失明させてやろうとかね。
辰巳とかいう友人を殺してやろうかとも思った。
…嫌だなぁ。そんなに脅えないでヨ。
とにかく君が依存していそうな物を考えたんだ。


何故って?
そりゃ君だって人間だから独りじゃ生きていけない、
だから何かに必ず依存するだろう?
で、ふと気が付いたんだ。
最近君と逢う回数が増えているなってさ。
自意識過剰かとも思ったけど、一種の賭けで言ってみたら大当たりだ。


何がって?…鈍いなァ。
君は酷く傷ついただろう?
私に「サヨナラ」と言われて。
それは君が私に依存しているからなんだよ。
まだ分からない?
だからぁ、





君は私が好きなんだよ、









ブラック・ジャック。







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05.11.22