ヤりたい。
「おい…何しやがる」
「何って…?ナニだよ」
ヤりたい。
そう彼が言ったから私は素直に彼の家に足を踏み入れた。
暫くはリビングで愚痴を溢しながら酒を飲んでいたが、彼の目がとろりとしてきたのを見計らって寝室に連れ込む。
二人同時にベッドにダイブをして軽いスキンシップを取り合った。
啄ばむような口付けを繰り返し、酔いの入った甘ったるい体の痺れに快感した。
顔の傷に舌を這わせればぎゅっと瞳を瞑る彼が目の前にいる。
心底可愛いなと思った。
さてそろそろか、と思い彼のシャツのボタンを外そうとしたがその手を静止させられた。
「いいんだ…今日は俺がヤる」
耳元で囁かれた。
ぞくり、と背中に快感が走り抜ける。
何時もとは違う、少し熱を帯びた情熱的。
妙に積極的な彼に疑問を抱いたが、まぁ積極的に超したことはないと思い彼にされるがままになる。
彼は自分の胸元に結ばれていたタイをするりと外し、それで私の手を一纏めにして頭上に縛り上げた。
「へぇ、、、こういうプレイがお好きなのかい。物好きだねぇ…」
「ふ…こっちの方が興奮すんだろ?皮肉はやめてくれよ」
そのままベッドの柵に両手を固定して彼は私の腹の上に馬乗りになる。
自身と私のシャツを肌蹴させ、体を密着させるように私の胸の上に伏せ、ぴったりとくっついた。
鈍い、しかし心地よい痛みを感じる。
どうやら彼が鎖骨に噛み付いたらしい。
「痛っ」
「…悪い」
「下手だな」
「あんたのだって何時も痛ぇよ」
噛み付いた部分をぺろりと舐め上げる彼は、酷く美しかった。
もう一回、今度は右の鎖骨に噛み付かれた。
そしてぺろりと舐め上げる。
しっとりと私の首元に落ちたツートンの髪がくすぐったかった。
「あんたと同じで俺だって独占欲が強いんだぜ?…たまには噛み付かせろ」
「くっく…キスマークって言えよ、馬鹿」
舌を出したまま話すから滑舌が悪かったがそれも可愛い。
そのまま私の口に舌を差し入れディープキスをかますなんてのもまた積極的で良いじゃないか。
何時になく自分を求めてくる彼が愛しおしくて堪らなかった。
だが抱きしめたいのに手が動かないので抱きしめようが無い。
そしてなかなか本題に入らない彼に、少しのズレを感じた。
「ていうかさ、お前、デキんの?すげぇ心配なんだけど」
にやりと皮肉めいた言葉をを投げかけてやると彼はにっこり笑った。
「何時もサービスしてくれっからさ。疲れてるだろ?お前の疲れをとってやるんだよ、俺が」
おかしい。
何時もなら頬を少し染めて馬鹿にするなと怒るのだが…。
無駄に自意識過剰だ…というか性格が丸っきり変わっていないか?
やはり何かがズレている。
「ほら…コレであんたを気持ち良くさせてやるんだよ」
そして彼が取り出したのは彼の手には少し大きいくらいの棒状の物体。
彼はその物体の先端をぺろりと舐めた。
今度は可愛いなんてもんじゃない。
目がギラギラと、紅々と光っていた。
『おい…何しやがる』
『何って…?ナニだよ』
そして今に至る。
「ふざけるなよおい、そんなもんで…」
「うるせぇな。何時ももっと太ってぇブツでヤるくせに」
いや、ちょっと待て。
それはそうかもしれんがそんな事ァ聞いていない。
『ヤりたい』
っていうのはただ彼がヤりたかったから誘ってきたのだと思っていたが…。
違う意味だったのか!
萌えてたブツが一気に萎えた気がした。
「待て、おい。ちょっと待ってくれ」
「嫌だね、待たない。あんたも何時も待ってくれない」
じりじりと迫り来る物体と彼。
足を大きく広げさせられ、股の間に彼が座り込む。
手も拘束させられてるため完璧に抵抗も出来ない状態だった。
背中に冷や汗がだらだらと流れる。
「ズレ」をもっと早くに感じ取っていればこんな事にはならなかっただろうに…。
「やめろって、、、。なぁ、俺がそれに弱いの知ってんだろ…」
「…馬鹿だなあんた」
「だからヤるんだよ」
何時もより皮肉度が高い微笑みで笑われたら、もう何の言い返しようも無い。
ああ、もういいですよ。ハイ、ヤっちゃってください。
私を好きなだけ喘がせればいいさ。
畜生、あんなシチュエーションで普通こうなるなんて誰も思わねぇよ!
酔っていると思ったのも見せかけの演技だったのか、呼吸一つ乱さず彼は一気に私の弱いところを突き上げた。
「痛っ……!!」
「ん…?ズレてたか?おかしいな、ここが一番イイところだと思ったんだけどな…」
首を傾げながら彼は尚も突き上げる。
「イッ…!やめっ、、、」
「お、よーし。此処か!」
そしてイイところを見付けたかと思うと先刻にも増して力を注ぎ突き上げてきた。
もう限界だった。
「あだだだだだだっ!痛い!痛い痛い痛い!!」
「この野郎!俺の何時もの苦痛よりもずっとましだ!食らえ!!」
「やめろ!悪かった!!俺が悪かったからやめてくれ!!」
「あんた何時も不健康そうだからな。俺の愛の鞭だと思え!」
完全無欠な人間などこの世には存在しない。
ましてや私なんて。
何処で知ったのか…多分妹だと思うが、彼は俺の足ツボを思いっきり足ツボ用の棒で押してきた。
誰にでも弱点というものはあるのだ。
私の場合それがまさに「足ツボ」だった。
「いってぇ!!痛だだだだだっ!!!」
「あんた胃腸が弱いな?消化不良か?よしよし…」
「何がよしよしだっ…!?ったたたた!痛い!痛いって!」
我ながら情けない声である。
私の欲望のままに抱かれる彼の気持ちが少し分かったような気がした。
随分と、それはもう辛く痛かろうに…。
今度からはもう無理矢理には抱かない、と10回くらい叫びながら訴えてようやく手と足を開放された。
じんじんと足は痺れているし、手も縛り上げられていた為、血があまり通っていなくこっちも痺れていた。
散々私を痛めつけれて嬉しいのか、彼は鼻歌交じりに足ツボ用の棒を閉まっていた。
「…」
「どうだ?疲れは取れたか?」
これまたにっこりと微笑んで問う彼は、どう皮肉めいた言葉でも可愛い、としか言いようが無い。
「…すまないな、何時も」
素直に謝ると面食らったのか、暫く口を開けたままぽかんとしていた。
その隙に唇を奪うと先刻閉まったばかりの棒をまた取り出そうとするからおちおちからかう事も出来ない。
ただその彼が頬を赤く染めていたから
彼が何時も通りに戻って良かった、と心から思った
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05.10.22